1. はじめに
フェイスオフは新しいステージに挑む準備はできた。
フェイスオフ選手は他のポジションと違い、特殊だ。我々はいろんな大学と交流を積み重ねることで進化を遂げ、“ケガ人”、”ラクロスが下手な人”がするポジションの立ち位置から、試合を大きく左右する重要なポジションへと責任と共に成長することができた。
これまでの国内におけるフェイスオフレベルには大きくばらつきがあった。各地区、1部2部、チーム同士等、様々な局面にあった。そして結果レベルや解釈の差が大きすぎた為にやむを得ず、試合の進行上ファール行為を取らずに流す必要があった。その例が「セッピ」である。これはタイミングの解釈が各チームであまりにも異なっていた為、笛のタイミングでのファールを取りたくない為にセットと笛が一緒になってしまったのだ。
そんな状況下、フェイスオフ選手の中にとてつもない苦労があった。練習ではしっかり技術を磨き上げても、試合になると勝てない。そしてチームに責められた選手はやむを得ず勝つために審判がファールをとらないギリギリを攻め続け、いつの時しか、選手同士の戦いというより審判との戦いになってしまったのだ。
そして遂に苦労した甲斐が見え始めてきた。フェイスオフ選手の努でルールの厳格適用化を求める総意の声が届き、“ルールの厳格化”が実現した。これは一人で成し遂げられることではなかったので、フェイスオフの技術に日々磨きをかけてる選手みんなにお礼をいいたい。みんなの努力なくしてルールの厳格適用化は実現しなかったことを強く感じてほしい。
そしてこれを読んでいる皆様にお願いがある。本件の導入はプレイヤー同士の相互理解、および審判と選手の間の相互理解なくして成し遂げることができない。選手は厳格適用を強く受け止め、日々の練習に取り入れることで慣れてほしい。また、周りにいる学生審判員や笛を吹いてくれるマネージャー等と話し合いながら厳格化を促してほしい。
フェイスオフに勝った時だけでなく、負けた時も同じぐらい納得がいくよう、“フェアプレーの精神”にのっとったフェイスオフの新たなステージをみんなで気づき上げよう!
2.主な注意点
キーワードはルールの厳格適用
- 2-1. クロスの置き方についての厳格化
- トップトゥストップ、オフザライン、パラレルトゥザライン
- 2-2. フェイスオフの新しいプロセス
- 笛での反応の厳格化、適切な置き方を促し、NCAA適用-likeに寄せる
- 2-3. フェイスオフプレイ時ファールの厳格適用
- 肘・膝等の体による妨害行為の厳格なファール適用
2-1.クロスの置き方についての厳格化
ルール34.2はクロスがお互い公正に置かれる用、記載があります。つまり、置き方によってフェイスオフ選手間で優劣がついてしまうことを競技としては想定していなく、本来あってはいけません。
選手はクロスを置くときに公正に置くよう以下を注意します。
トップトゥストップ
“ルール34.2「審判員はクロスの裏面が正しく向かい合っていること(原文The referee shall make certain that the reverse surfaces of the crosses match evenly)」をより厳密に適用し公平なフェイスオフとするため、スティックのヘッドの先端(トップ)と相手のスロートのボールストップ側(ストップ)に合わせてセットすることとします。”
(フェイスオフに関する諸注意 修正版より)
- 自分のクロスと相手のクロスの先端とスロートが合わさっていることをしっかり確認しましょう。
- ファーストフェイスオフが始まる前の時間等を使って選手・審判の3人で納得のいく位置をしっかりと決めましょう。
オフザライン
“センターラインがルール通りの幅(10 ㎝)である場合は、グラブもスティックもセンターラインやボールに触れてセットすることはできません”
(フェイスオフに関する諸注意 修正版より)
ルール 34.2 「両クロスとボールを10 ㎝幅のセンターライン上にできる限り近づけて置く。」
(JLA男子競技用ルールブックより)
(Rule 34.2) “The crosses shall rest on the ground on that player’s defensive half of the field, parallel to the centerline, and must not be within or touch the 10 centimeters (4”) wide centerline”
(FIL Men’s Field Rulebook 2017-2018より)
- ルール 34.2に明文化されている記載を厳格適用としセンターラインに触れずにグローブとクロスをセットする必要があります。
- この時に、左手および、シャフトのエンドもセンターラインを交差していないことをしっかり確認しましょう。
- 実際、大井や駒沢のセンターラインの幅を図ってみると13cmほどありましたので、大げさに気にする必要はありません。しかし、明らかにボールとクロスの間に隙間がないほどセンターラインに寄せている場合は有利なポジショニングを意図的にとっていることになりうるのでイリーガルプロシージャーが科されます。
- 重要なのは選手と審判の3人で納得のいくクロスの置き方がされているかどうかの確認です。こちらも試合始まる前やクォーター間などで審判と積極的に会話をし厳格化を目指しましょう。
その他確認事項
- クロスが地面と垂直になっていることを確認しましょう。
- 斜めにセットしてはいけません。(優劣が出来てしまうため)
- ヘルメットや体等がクロスエリアや相手エリアに入ってはいけませんので注意しましょう。
2-2.フェイスオフの新しいプロセス
フェイスオフは選手同士で技術・笛の純粋な反応・パワーで競います。審判のルール適用の曖昧さであったり、タイミング予測に左右されながらして競うものではありません。
以後、新しいプロセスによって審判はスティックの置き方について厳格確認しホイッスルに合わせてスタートするようにします。
- “審判員は、選手の横に直立した状態のまま「ダウン」をコールし、選手にフェイスオ
フのポジションに入らせます。 - トップトゥ ストップを含めルール通りにクロスが置かれていることを確認したのち
に、選手の横に直立したままセットをコールします - セットをコールした後、審判員は状況を目視しながら選手から離れ位置につき、笛を
吹きます。”
(フェイスオフに関する諸注意 修正版より)
(詳細手順および、確認事項)
- ダウン:審判はボールから直立した状態でダウンをコールします。この時に上記2-1.で記載した事項を確認します。
- タイムアウト空け、クォーター間など時計が止まっているときは選手と話ながら調整を行ってください。時計が流れているときは調整せず、すぐにイリプロをとってください。
- 審判員は一言で直せるような調整であれば時計が流れている時でもファールをすぐにとらず調整してよいでしょう。
- セット:クロスが正当に置かれていることを確認したことを示し、審判員はそのまま動かず直立した状態でセットをコールしFO選手の動きを止めます。
- ホイッスル:セットをコールしたあと初めてフェイスオフ選手から離れ、審判員はポジションに入ります。入った後、ホイッスルをふいてプレーを再開してください。
- セットと笛の間に相当な間が空く為、笛が必然的にランダムに吹かれることとなり、選手は笛で反応することを余儀なく求められます。
2-3.フェイスオフプレイ時のファール厳格適用
ルール34.4「審判員がホイッスルを鳴らしたら、両選手はボールを得るために自分の思うようにクロスを動かしてよい。ただし相手のクロスを蹴ったり、踏んだりすること、および相手のクロスを動かすために自分のクロスを蹴ったりすることは反則である。選手は故意に手もしくは指を使ってボールを扱ってはならない。選手は相手のクロスを開いた手や指を使って掴んではならない。」
(JLA男子競技用ルールブックより)
“ボールをクランプしている相手のスティックをスティックで上から押さえつけるだけ
でなく、以下のプレーも反則となりますので、注意してください。
A) 押し合いの際に、肘や膝、つま先を使って自分または相手のクロスのヘッドをコントロールする(ホールディング)
B) 頭を使って相手の身体を押さえる(ホールディング)
C) ボールが出た後に相手の身体を手で押す(ワーディングオフ)
これらの行為は本人の意図するところでなくても相手にとって明確に不利な状況が生じますので、選手はこれらの状況になった場合に回避することを意識し、審判員はしっかりと状況を見極め判断するようにしてください。”
(フェイスオフに関する諸注意 修正版より)
現FILおよびJLAルールブックには上記行為がファールである事を明文化しておりません。しかし、上記ルール記載の通り、フェイスオフはボールをクロスを使って取ることと定義しているので、この行為を妨害するように手・肘・膝・頭等の体を使うことはファールの対象となると解釈します。審判員は故意・過失どうであれ、体の一部が自分または相手のクロスに触れた瞬間にファールを取るようにしてください。選手はフェイスオフはクロスとクロス、ボディとボディのコンタクトだけであるといれておくよ良いと思います。NCAAのルールブックは当該行為をファールとすることを明文化しているので、下記に記載します。
Section 3 Rule 12. “It is illegal to kick, step on, or place any other body part to his crosse
or the crosse of the opponent. It is illegal for a faceoff player to use his crosse to hold or pin down either player’s crosse.”
(NCAA Lacrosse Rulebook 2018 より)
ファール行為になる例
- 肘・ヘルメット・その他体の一部で自分・相手のクロスを押さえつけてボールをとれなくすること <ピンニング>
- ボールを取った選手のクロスの上に腕や体等で押さえつけボールを出させなくすること<ホールディング>
- 体で相手のクロスを押し返したり、抑えたりすること<ホールディング>
- 相手のクロスを脚でまたがって、ボールを出せなくすること<ホールディング>
- ボールを獲得した選手に対して片手で相手のクロスを腕で出させなくする行為
<ホールディング> - 相手のクロスを脚などで蹴ること <イリーガルプロシージャー>
3. 終わりに
繰り返しになるが、日本ラクロス協会(JLA)より発行された“フェイスオフに関する諸注意修正版”はルールの改正ではない。国内全体の技術レベルが向上したことにより、ルールを厳格適用する必要性が出てきた為、解釈をより厳格化するというものである。本投稿も諸注意に記載された内容をより細かく解説し分かりやすくする為のものと位置づける。
ラグビーには且つて審判がいなかった時代が存在した。キャプテン同士が試合前に紳士協定を結び「フェアプレーの精神」で戦っていたのだ。選手らは常に正々堂々ベストを尽くし、勝っておごらず、負けて清く。ラグビーは勝つことよりも、いかに立派に戦ったが焦点となっていたのだ。フェイスオフもいつかそうなることを信じ、筆者は立派な選手になれるよう頑張りたい。
参考文献: